今のヨーヨーってこんな感じなんだ!とひと目でわかるし、ひと振りで教えてくれるトリックです。
ヨーヨーがストリングの先でくるくると空転することをスリープといいます。このスリープを一定時間行うのがスリーパーです。
僕はヨーヨーが下で初めてギューンと回ったときの感動が忘れられません。スパッ投げてパシッとキャッチ出来たときのヨーヨーをコントロールしてる感が、どの基本トリックよりも一番強く実感するトリックなんじゃないかなと思います。
たいていのトリック検定会やトリックリストでは序盤に登場します。初心者向けヨーヨーの説明書にもイラスト付きで書かれていることが多いです。
成功基準
- 正しく投げる
- 5秒以上スリープ
- 正しい向きでキャッチ
- バインドヨーヨーの場合、キャッチ不要
トリックを習得できたかどうかを判断する目安です。トリックリストや競技会によっては、成功条件が異なる場合がありますので、検定を受ける際などはルールを事前に必ず確認しましょう。
前提トリック
回らないときは
ヨーヨーによっては下でまったくスリープをしないものがあります。ただ、当店で取り扱っているヨーヨーで初心者向けのものであれば、スリーパーは必ず出来ます。
ただ、それでも回らないときは何か原因があるかもしれません。ヨーヨーの組み立て方が間違っていたり、ストリングが中で引っかかっていたり。新品であってもこうしたケースはあるので、まず以下の手順でヨーヨーを確認してみましょう。
- 強く投げるより、まっすぐ投げる方が重要。弱い力でもいいからヨーヨーの姿勢がまっすぐかどうか注意する。
- グラビティ・プルの要領でヨーヨーを上から離して自由落下させ、スリープするか確かめる。
- 自由落下によってスリープをすれば、戻りが強めのヨーヨーなので、投げる力を弱めに、なおかつまっすぐ投げるようにする。
- 自由落下でも一切スリープせず戻ってきてしまう場合、まずそのヨーヨーがひねって分解できるヨーヨーかを確認します。当店の初心者向けヨーヨーは、すべて両側のボディを握って、ペットボトルのようにひねると分解できます。
- 分解できた場合、一度手で外せる部品は外し、商品写真を参考に元通り組み立てます。(あるものは)スペーサーを正しい向きに→ベアリングをまっすぐはめる→ボディを組む→ストリングを装着。必ずストリングは最後に装着します。
- 分解できない場合、そのヨーヨーはスリーパーが出来ない仕様である可能性が高いです。ただしストリングを外せる場合は一度外して、再度装着してみると解決することがあります。
- 上記を試してもまだスリーパーがうまく出来ない場合、ストリングの汚れや弾力によって失敗している可能性があります。新品のストリングを装着し、しっかり伸ばして弾力を取ってからストリングの長さをヘソの高さくらい短めに調整して、再挑戦してみてください。
ここまで試したら、あとは練習あるのみです。スロー&キャッチの動画も参考になるかもしれません。
まっすぐ投げられないときは
お手本の動画のようにヨーヨーがまっすぐにならない!という壁にぶつかった人は少なくないはず。こればかりは回数を重ねていくしかないのですが、その上で、練習で心がけてほしいポイントを紹介します。
- 毎回、どちらに傾いてしまったかを確認する。
- 傾いた方向に対応し、次に投げる方向を調整する。右に傾いてしまっていたなら、次はあえて少し左に傾けるように投げること。逆もしかり。
- 強く投げるより、まっすぐ投げることの方が重要。弱くてもいいので、優しくていねいに投げることを第一に練習すること。
- 可能ならウイングシェイプのヨーヨーを用意する。近年のビギナー向けヨーヨーでウイングシェイプのものは、ヨーヨーそのものが比較的まっすぐに投げやすく、スリープもロスしにくい構造になっているため。
戻ってこないときは
最後にヨーヨーを戻すときは、ヨーヨーをジャンプさせる必要があります。
あくまでピョンとジャンプするのが必要であって、ヨーヨーがその場から上昇するだけではないことに注意。動画で「手をチョンと引いてキャッチ」と言っているのは、引くことで意図的にストリングをたるませることでヨーヨーが戻るようにしているためです。
そのためヨーヨーがうまく戻ってこないという方は、そっと手を上げてしまっていることが多いです。手首から先をチョンと引く、グイっと引く、ビっと引く。手首の位置を変えず、ほぼ指先だけでヨーヨーを引いてジャンプさせてみてください。
どれだけ引っぱっても、ヨーヨーをジャンプさせても戻ってこない場合は、そのヨーヨーがバインドヨーヨーであったり、オイルメンテナンスが必須の(多くの場合は昔の)ヨーヨーである可能性があります。バインドというトリックで戻すようにしましょう。
解説動画は大量
どうしても手の形が覚えられなかったり、まっすぐ長く回せないという方も多いため、いろんな方がスリーパーの解説動画を公開されています。
いったん力を抜いてやってみたり、気晴らしに違う動画を参考にしてみてはいかがでしょうか。まったく出来る気配がないと思っていても、試行錯誤しているうちに「あ、できた」ということもあります。
動画ごとにアドバイスの内容が違うこともありますが、個人個人に合ったアドバイスというのは必ずしも同じではないため、自分がやりやすいと思ったコツにならうようにしましょう。
SHU TAKADA Channel(YouTube) ほかYouTubeでスリーパーで検索
派生
スリープするトリックすべてが派生系ともいえますが、特にスリーパーのフォームそのものが色濃く残るものをピックアップしました。
- ヨーヨーを地面につけて転がすウォーク・ザ・ドッグ(犬のさんぽ)
- ヨーヨーと地面を手につけるザ・クリーパー
- ストリングを指にかけてヨーヨーを持ち上げるスターテイル
- 手元で塔の形を作るタワー(東京タワー)
- ほか、スリープをしたままストリングで形を作るピクチャートリック
豆知識
どれだけ長く回せるか、といったエンデュアランス(耐久)競技で使われることもあるトリック。
スリープの世界記録は、C3ヨーヨーデザイン『BTH』が叩き出した30分28秒30(アメリカヨーヨー協会公認)という凄まじい記録となっています。
規定トリック大会など、一部競技ではスリープ時間を得点にしたり、タイブレークで争われることもあったとか。現在はヨーヨーの技術進化とともに、上記の世界記録とまではいかなくともスリープ時間が非常に長くなるケースもあり、競技として行うのに現実的ではないことも増えたことや、競技の主流がフリースタイルに移り変わったこともあって、こうした機会は減ってきています。
しかし「最後に必ずキャッチをする」「バインド不可」「使用ヨーヨー限定」など、さまざまな条件下で逆に奥深さを増し、未だヨーヨーイベントやフェスで楽しまれることも多いです。
当店でもスリーパーによる企画動画をリリースしています。
スリープの長さ≠性能の高さ
スリープの長さは、ほとんどのトリックのやりやすさに直結する欠かせない要素です。
軽い力でしっかり長く回ってくれれば、その分余裕をもってトリックが出来ますし、力の弱い小さなお子さまや年配の方でもヨーヨーが楽しめるようになります。
ヨーヨーを始めたばかりの頃ほど、しっかりスリープしやすいビギナー向けとされているヨーヨーを選ぶことが重要になります。
しかし、スリープが長ければ長いほどいいヨーヨーなのかというと、そうもいきません。実際にトリックをする上ではトリックにおけるスリープ時間という別の要素が関わってきます。
前述のスリーパー世界記録を樹立した『BTH』というヨーヨーは、当然スリープの長さに特化したヨーヨーなのですが、性能としては従来のヨーヨーの2倍近い重量、ストリングをかける幅は半分以下という多重苦を抱えています。説明書にも「スリーパー以外では使用しないでください」とメーカーが注意書きを添えるほどです。
スリープの長さは特にストリングトリック向けヨーヨーたち、つまり1A・3A・5Aに深く関わってくるのですが、これらのスタイルはストリングに乗せやすくするためであったり、ストリングに乗っている状態でのスリープの長さを伸ばすため、形状を大きく変更し、単なるスリーパーでの長さを犠牲にしています。
その上で、同じストリングトリックのスタイルであっても、その中のトリックジャンルでスリープの長さを保つのが得意なもの、不得意なものというのがヨーヨーごとに分かれます。
そのため、もし将来ヨーヨーを選ぶときには、どれがスリープが長いかではなく、どれが今練習している技に合うかで測る方が無難です。
近年のヨーヨーは、よほど極端なコンセプトのものでなければどれも使いやすくなっているので、最後は見た目で選んでしまってもいいという場面も多いですね。